Amazonの俸給システムには面白い特徴があります。
職級と役職名に相関関係があり、結果として役職名がわかると、職級の高さとおおよその給与レンジが予想できてしまいます。
今回、様々な情報を精査して、日本での年俸レンジの予測までカバーした記事にまとめました。
Amazonグループ企業への転職を目指す方にはとても実用的な内容になっています。
外資系の俸給システムを理解する意味でも役に立ちますので、他の外資系企業への転職志望の方もぜひご覧ください。
ご質問などありましたら、コメント欄かTwitter(@Gaishiinfo) までお気軽にどうぞ。
Amazonの職級=レベル | Level
日本企業では職級、等級と呼ばれる、給与を決める基礎になるシステム。
外資系IT企業の職級(job grade)システムが日本企業と大きく違っているのは、管理職と一般職で共通の職級を使用する事です。
日本企業の多くでは、一般職から管理職の職級に移らない限り、大きな昇給は望めません。
外資系の職級システムでは、目覚ましい成果を上げれば一般職でも管理職を超える職級と給与を得ることができます。
Amazonの職級は『レベル(level)』と呼ばれています。
レベルは、L1からL12までの実質10段階(L9は欠番、L12はジェフベゾス専用)になっています。
さらに、L1-L3はアルバイトと契約社員用ですから、正社員のレベルはたった7段階しかありません。
これは他社と比べるとかなり少ないです。
結果として、アマゾンでは各レベルの年俸レンジの幅がかなり広いです。
日本の会社では同年代の社員であれば職級も一緒だし、給料もあまり変わりません。
外資系だと給与が年齢性別関わらずバラバラなので、各個人の職級が幾つかは、秘密にされています。
ですが、Amazon社内では全社員のレベルが社内で公開されています。
社内システムで確認すれば、同僚や自分の上司、本社の偉い人のレベルや給与レンジがわかってしまうのです。
Amazon、面白い会社です 🙂
Amazonの役職名 | Title
一般的に、外資系企業は社員のタイトル(役職名、以下タイトル)を管理する事にあまりこだわりません。
人事管理上の人事タイトルはあるものの、採用するマネージャーが常識の範囲で適当に考えるのが普通です。
さらに、外向けの日本語のタイトルは社員本人が命名する事も多いです。
例えば、こんな感じです。
社内タイトル: Senior Product Manager
名刺タイトル: 製品担当部長
Amazonでは、人事タイトルにはレベルに合わせた命名法則があります。
そして、人事タイトルが社内でも使われています。
そのため、社内の誰かのタイトルを見れば、その人のレベルがわかるシステムになっています。
↓は複数のサイトの情報から作成した、Amazonのレベルとタイトルの対応表です。
Job Level
職級一般社員
役職名管理職
役職名L1-3 アルバイト・契約社員 - L4 Associate, Assistant, Consultant
SDE
(Software Development Engineer)- L5 Manager (PM, VM, BDM, etc)
SDE II
Solution ArchitectManager L6 Senior Manager (Sr. PM, VM, BDM, etc)
SDE III
Senior Solution ArchitectSenior Manager L7 Principal (Principal PM, etc)
Principal SDESenior Manager, Head L8 Senior Principal
Senior Principal SDEDirector (GMレベル) L10 Distinguished Engineer Vice President L11 - Sr. VP L12 - Jeff Bezos
L1-L3はフルフィルメントセンター(Amazonの配送拠点)の発送担当などのアルバイトや、在宅勤務の契約社員などの時給制社員の職級です。
日本では一部L3から正社員の職種もあるようです。
L4は、エントリーレベルの職種です。
エンジニア職も、L4が最初のレベルです。
新卒新入社員はL4でスタートです。
L4のタイトルには、”associate solution architect”のように、エントリー職を示す『associate』や『assistant』がつくか、”consultant”など”manager”がつかない肩書きが多いです。
L5社員のタイトルの多くには、”manager”がつきます。
Amazonで最も多い職種の一つ、Vendor Manager(VM, ベンダーマネージャー)はL5です。
製品・サービスの責任者、PM(Product Manager, プロダクトマネージャー)もL5です。
TAM(Technical Account Manager)もL5。
Site Merchandiser(サイトマーチャンダイザー)のように、managerがつかなくてもL5の職種もあります。
L5エンジニア職は、Software Development Engineer IIのようにタイトルの次にIIが付きます。
AWSに多い、Solution Architect (SA, ソリューションアーキテクト)もL5です。
部下を持つ管理職(people manager)は、L5が最も下のレベルになります。
L6はシニアレベルの社員と部長クラスの管理職になります。
多くのL6社員と管理職者にはsenior(シニア)の肩書きが付きます。
Senior VM, Senior PMなどが、L6になります。
L6エンジニア職はタイトルの後にIIIが付きます。
L7は上級一般職と、事業部長クラスの管理職です。
L7社員とエンジニアには”Principal”の肩書がつきます。
L7管理職は”head”のタイトルが多いです。
L8はディレクター(事業本部長クラス)と上級エンジニア。
L9はなぜか欠番、L10は最高位エンジニア(distinguished engineer)とvice president(VP, 副社長)です。
コロナウィルス安全対策がらみの会社の不当解雇に抗議して退職した、AWSのTim Brayのタイトルはdistinguished engineerですからL10。年俸1億円と言われていますが、L10の上位に収まりそうですね。 😛
Amazon Japan、AWS Japanの社長さんたちはVice Presidentなので、日本の社員の最高位はL10になります。
L11は senior VP、L12は元CEOのJeff Bezos専用でした。(後継CEOのAndrew JassyがL12を使っているかどうかは現時点で不明です)
(Source: Amazon Career Levels and Salary Compensation Guide 2019,What is the salary range for Level 7 at Amazon?)
Amazonの年俸レンジ | Annual Salary Range
ここまで説明したように、Amazonではタイトルとジョブレベルは相関関係があります。
そして、各ジョブレベルに年俸レンジが設定されています。
この3つ全部を合わせた表を作ると、下記のようになります。
レベル 一般社員
役職名管理職
役職名年俸
レンジ
(米国)年俸
レンジ
(日本)L1-L3 アルバイト・契約社員 - L4 Associate, Assistant, Consultant
SDE
(Software Development Engineer)- $5-7万 約360-600万円 L5 Manager (PM, VM, BDM, etc)
SDE II
Solution ArchitectManager $7-14万 約500-900万円 L6 Senior Manager (Sr. PM, VM, BDM, etc)
SDE III
Senior Solution ArchitectSenior Manager $12-20万 約900-1200万円 L7 Principal (Principal PM, etc)
Principal SDESenior Manager, Head $16-30万 約1200-2200万円 L8 Senior Principal
Senior Principal SDEDirector
(GMレベル)$30-60万 約2200-4500万円 L10 Distinguished
EngineerVice President $60-100万 約4500万-1億円 L11 - Sr. VP $100万以上 NA L12 - Jeff Bezos $81,840 NA
米国社員の年俸レンジに関しては、前述のサイトのデータを使用しています。
総資産10兆円以上の元Amazon CEO ジェフ ベゾスの年俸もリークされており、最高位のL12なのに、年俸 $81,840(約850万円)と大変控えめになっていました。
後継CEO Andrew Jassyの年俸は現時点で$175,000で、Bezosよりは多いものの、IT企業のCEOとしてはかなり少ない数字です。
アマゾン ジャパン合同会社、アマゾンウェブサービス ジャパン株式会社の求人で、最低基本給の記載のあったもの約100件と、VorkersなどのAmazon口コミ情報約50件を元に、日本の年俸レンジを当サイトで推測しました。
金額は基本給のみの推測です。RSUやサイニングボーナスは含みません。
Amazon米国本社の給与レンジの円換算で比べると、日本の給料はちょっと低めですね。
Amazonのほか、Starbucks、Microsoftの本社のあるシアトルの生活費は年々増大し続けているため、本社社員の給与水準はかなり高くなっています。
この表を利用していただくと、Amazonの求人情報のタイトルから、おおよその年俸レンジが想定できますので、ご興味のある方はご活用ください。
Amazonの給与 | Payroll
最後に、Amazonの給与の内訳についてまとめておきます。
Amazonの給与は、大きく分けて基本給、中途採用者に2年間限定で支払われるサイニングボーナス、譲渡制限付き株式(RSU)の3つで構成されます。
それぞれについて解説します。
基本給・賞与 | Base Compensation/ Bonus
Amazonは年俸制で、年俸を12分割したものが毎月支払われます。
例えば、L4で年俸480万円であれば、毎月40万円(税抜き)が月給となります。
他の多くの外資系企業もこの12分割方式で支払われています。
日本の会社のような、定期支給の賞与・ボーナスはありません。
社員的には、後述のRSUがボーナスのような位置づけになっています。
サイニングボーナス | Signing Bonus
Amazonではキャリア採用者に2年間限定で、サイニングボーナス(signing bonus)が支払われます。
他の外資系では、sign-in bonusやsign-up bonusとも呼ばれ、入社特別ボーナス的な位置づけで、どうしても入社してほしい幹部社員候補などに限定して支払われる事があります。
Amazonの場合は入社後2年間、サイニングボーナスをほとんどのキャリア採用社員に支払っているようです。
サイニングボーナスの金額は、前職の給料やジョブレベルによって異なります。
基本給同様、サイニングボーナスもオファーされた年額を12分割して支払われます。
サイニングボーナスは2年目は1年目よりも減額され、2年経過すると支払われなくなります。
2年目からは任意でRSUを売却し、現金ボーナスのように受け取ることができるからです。
譲渡制限付き株式 | Restricted Stock Unit
譲渡制限付き株式(以下RSU)は、すべてのAmazon正社員にオファーされています。
RSUとは、売却可能時機が制限されている株式と考えてください。
入社2~3年目から毎年売却することが可能な制限付き株式を、入社時に付与されます。
付与される株式数は、ジョブレベルや現金の年収額によって異なります。
また、採用年度のAmazonの株価にも影響されます。
▼サイニングボーナス、RSUと基本給のざっくりとしたイメージは以下のようになります。
良好な成績で勤務を続ければ、毎年査定時にRSUが継続的に付与されます。
Amazonの株価はすさまじい勢いで上昇を続けています。
3年以上前から勤務しているアマゾンジャパン・AWS社員は、RSUの売却で毎年数百万円-数千万円の売却益を得ることができるはずです。
▼直近5年間のAmazon株価推移です。
2015年に約540ドルだった株価が5年で5倍以上に高騰!
2015年に時価100万円分のRSUを付与されていれば、2020年には500万円分に高騰しています!すごいですね。
RSUに関して詳しくは↓の記事をどうぞ。
RSUの仕組み、メリット・デメリット、ストックオプションとの違い【徹底解説】
住宅手当&各種手当 | Misc Allowance
多くの外資系と同様、アマゾンでは住宅手当などの諸手当は一切ありません。
社会保険、健康保険、通勤手当はもちろん完備されています。
退職金 | Pension
アマゾンジャパン、AWSジャパンでは企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入しており、勤務している期間、会社負担で積み立てられます。
将来転職する際は、転職先が企業型DCに加入していれば、アマゾンジャパン、AWSジャパンで積み立てた分をそのまま移動することができます。
まとめ
- Amazonの職級は『レベル』と呼ばれる
実質7段階の職級が、一般社員と管理職両方に使われています。 - Amazonでは社員のタイトルに命名ルールがある
タイトルはレベルと相関関係にあるため、社員のタイトルを見るとレベルがわかります - 各レベルには年俸の下限と上限が決まっている
レベルやタイトルがわかれば、年俸レンジが予想できます - 給与は、基本給、サイニングボーナス、RSUで構成される
月給は年俸+サイニングボーナスを12分割して支給
サイニングボーナスは2年で終了、あとは株価の爆上げを期待 🙂
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