ソフトスキル(soft skills)って聞いたことがありますか?
募集要項を読んでみると、求められる専門分野の能力について、必要なスキルが記載されています。
ハードスキルとソフトスキル
- 専門職種経験年数、プログラミング言語、業界経験、資格、学歴 など
これらの定量的なスキルをハードスキルと呼びます。 - リーダーシップ、問題解決能力、交渉力、コミュニケーション、マネジメント など
自己・対人関係に関するこれらの定性的なスキルはソフトスキルと呼ばれます。
日系の求人ではこれらのソフトスキルに言及しているものはあまり見ないのですが、外資系企業の募集要項では頻繁に登場します。
今回はソフトスキルの中でも、外資系求人で最も多く登場するものを4つ取り上げて解説します。
1. Self Starter, Self Motivated -自分で仕事を作り出せる
Self starter (意訳: 自発的スターター)、self motivated (意訳: 自発的モチベーター)、どちらも良く募集要項に出てきます。
↓英語だとこんな感じです。
You must be a self starter to plan & drive complex projects independently.
『自発的スターター』で、自分で精緻なプロジェクトを計画、実行することができる。
2つとも意味するところはほぼ一緒で、細かい指示なしでややこしい仕事を自分で立ち上げて動かすことが出来る事が期待されています。
中途で入ると上司や先輩が手取り足取り、という日本企業と違って、外資系だと採用後すぐ『即戦力』扱いされて、上司からは基本的に放置プレイです。
募集要項を書くのは上司になる人ですが、同じ意味合いで↓のような表記もします。
Ability to work independently with minimal supervision.
『最低限の監督下で自律的に働くことができる』
ようするに放っておいても成果を出してくれる部下が欲しいんですね。
外資系企業の働き方としては、四半期の最初などに上司と計画をレビューしたら、あとは決裁(go/nogo)を求めるぐらいで、自発的に淡々と仕事を進めていきます。
助けが必要なときは上司はサポートしてくれますが、その際にもきちんと問題に対するオプションを提示して決めてもらう的な論理的な対応が必要です。
『一体どうしたらいいでしょうか』、と何度もやっていると最終的に悪い評価につながりかねません。
自分単独でリスクを取るのが苦手で、組織のサポートの下で安心に仕事をしたい人には外資系は難しいですね。
日系企業はしがらみが多すぎる、決裁に時間がかかりすぎる、自分で決めてもっとスピーディに仕事がしたい!
と思う人には外資系はピッタリです。
外資系式の仕事に慣れてくると、『カネは出すが口は出さない』上司に放置された環境で仕事をするのがすごく快適になります。
2. Communication Skills – コミュニケーション・スキル
外資系企業の仕事を進めるスピードはものすごく速いと言われます。
確かにその通りで、中で働いていると限られた時間内で秒速で物事が進んでいき、スピードが速すぎてたまに頭がクラクラしてきます。(冗談でなく本当です)
日本の企業だとハンコがたくさん押されないと進まない話が担当同士のメールで、電話で、小会議でどんどんと決まって進行して行きます。
その場で結論が出ないアイテムはA.I. (Action Item)、A.R.(Action Required)などと呼ばれる宿題になりますが、手間がかかるのでそれを嫌ってできるかぎり即決で話をすすめます。
そこで重要になってくるのがコミュニケーション・スキルです。
募集要項に “Fluency in English and Japanese communication”.
って書いてあるのを見て、『ああ、日本語と英語が流ちょうに話せればいいのね』なんて単純に思ってはいけません。
コミュニケーションと言われたら、単に話す力だけではなく聞く力(外人はすぐ口を開くので聞くのが苦手です)、判断力、交渉力、プレゼンテーションなど、多様な能力を問われています。
外資系企業ではスライドを使った会議での議論が一般的ですから、優れたスライド作成能力とプレゼンテーション(delivery)も重要なコミュニケーション・スキルです。
ホワイトボードや紙に図表を描いて説明するのもコミュニケーションです。
英語を使う職種の場合、海外本社との電話での会話や電話会議も頻繁に行われますので、音声のみのコミュニケーション能力も問われます。
音声だけの会議は、身振りが使えないので外国人でも苦手なところ、さらに言語のハンデも背負った我々にはかなり大変です。
不慣れなうちは、英語で電話するのが半ば恐怖でメールに頼りすぎるかもしれませんが、慣れると『メールじゃ埒が空かないから電話しよ』になります。
しんどいかもしれませんが、慣れるまで積極的に電話をするのをお勧めします。
また、メールでのコミュニケーションも重要ですから、reading/writing スキルも同時に問われます。
単にメールが書けるという話ではなく、簡潔に提案をまとめ、相手に決断を求め、合意を取り付ける、ためのスキルが必要です。
メールで始まった話で、途中で電話に変わると、メールの文面を見ながら会議をすることもありますから、複雑な話は箇条書きにするなどわかりやすくまとめるようにしたいです。
若干余談ですが、ほとんどの外資系IT企業がスライド依存の中、Amazonは文書による提案が重要視されており(社内パワポ使用禁止!)、優れた英語のreading/writing スキルが必須です。
アマゾン上級職の求人の多くでは、面接前後に英文レポートの課題が出ます。
外資系企業で求められているコミュニケーション・スキルは、大枠でまとめると『人に影響を与えて実行を促す』多様な能力です。
3. Problem Solving Skills -問題解決能力
外資系企業ではスピード感を持って様々な決定を行い、革新的な製品やサービスを競合他社に先駆けて投入する事を優先します。
スピード決断の裏側には、幾つかのリスクを前提で決定したものだったり、あるいは時間優先で過去の失敗などのチェックが完全ではないようなケースもあります。
スピードを優先した結果として、市場や社内で問題が発生する率は慎重な日本企業に比べて高めと感じます。
もちろん、会社全体として危機管理への取り組みはしっかりとしていますが、その中で各人の問題解決能力が問われています。
問題解決能力が必要な例として:
- 市場に出てしまった製品の担当者なら、問題解決チームを結成、統括し、迅速に問題を解決し、インパクトを最低限に抑える。
- 複数の部署で構成されるプロジェクトチームで技術的な紛争が起きて計画が頓挫してしまった場合、どのように軌道修正できるか提案を作り、合意形成する。
- 自社の製品の不良率の関係で、顧客の工場ラインが止まり、解決金を要求されているが最小限に抑える提案を半日で作って社内ステークホルダーの合意を取る
技術職でも、営業でも、品質管理でもマーケティングでも、外資系企業ではこの問題解決能力が重要だと感じます。
実際に問題が発生すると、解決まで普段よりもさらにスピード要求が上がりますので。
募集要項に、嫌な仕事も進んで実行する(make own hand dirty)という記載がある場合がありますが、これも問題解決能力の一環ですね。
嫌な話ですが、営業なら突然生産中止になった製品の代償を販売店と交渉する、人事の仕事ならリストラとか、、
嫌な仕事から逃げ回る人は外資系にも結構いるんです。
4. Leadership Skills – リーダーシップ・スキル
リーダーシップ・スキルは外資系企業の募集要項に頻繁に出てきます。
外資系企業が要求するソフトスキルの中で最も重要と言っていいんですが、最後に説明するには理由があります。
リーダーシップスキルはソフトスキルの集大成だからです。
日系の求人だと、『リーダーシップ』という言葉が出てくるのはほぼ管理職の場合だけでしょう。
リーダーシップの日本語訳が『指導・指導力』になっちゃってますから、上から目線なせいもあるんでしょうねえ。
ヒラが課長に『指導』しちゃまずいでしょうからね。
外資系企業だと、管理職以外の多くの社員にも『リーダーシップ・スキル』が求められます。
事業部単位で仕事を行う日本の会社に対し、外資系では組織がフラットなため複数部署共同で仕事を行う必要が非常に多いです。
新しいプロジェクトを提案、マネジメントやステークホルダー(stakeholder – 決定権者)の合意形成、プロジェクトをリードして進行する。
この一連の作業を行うのに最重要な要素がリーダーシップスキルです。
Amazonではリーダーシップが特に重要視され、『アマゾン社員全員がリーダーである』という位置づけの下、”Our Leadership Principles”(我々のリーダーシップ法則)という14項目の信条に沿って行動するよう定めています。
アマゾンへの転職に興味のある方は↓の記事ご参考。
アマゾン・AWSの面接突破はOLPの理解と対策が必須【徹底解説】
決裁ループも異なる別部署同士のスタッフと管理職が混在したチームで共同作業を行うには、ポジションパワー抜きでリーダーシップが発揮できる必要があります。
自分がスタッフレベルで、技術の部長に対して新しい作業の提案をし宿題作業を取り付け、進捗を管理する。
あなたの会社でこれ実行できますか?
役職抜きでリーダーシップを発揮するためには、ソフトスキルに関して総合的に優れている必要があると感じます。
優れた提案力、コミュニケーションと交渉力、問題解決能力、それらをチームが認め、専門分野のリーダーとしてリスペクトされる事がリーダーシップ発揮への道筋です。
もちろん、上下関係で行動が縛られない外資系企業の環境だからこそ実現できるのですが。
ところで、ManagementとLeadershipの境界は英語でも微妙になっています。
その説明の一つとして
“management is a science, but leadership is an art.”
『マネジメントは科学で、リーダーシップは芸術だ』
っていうのが個人的にはすごくピンときます。
マネジメントには一定の法則がありますが、リーダーシップは決まった形がないんですよね。
その人の性格や人格の上に形成されるうえ、確実に測る方法がないので。
Summary – まとめ
外資系企業では、定量的なハードスキルに加えて、自己および対人関係に寄与するソフトスキルが重視されます。
- Self Starter, Self Motivated -自分で仕事を作り出せる
外資系企業では個人の裁量は大きく、最低限の監督で最大の成果を求められます。
それには自発的に行動し、意欲を持って継続する力が重要です。 - Communication Skills – コミュニケーション・スキル
単に会話をする能力ではなく、『人に影響を与えて実行を促す』多様な能力が求められます
口頭だけでなく、メール・文書やスライドの作成、プレゼン能力も問われます - Problem Solving Skills -問題解決能力
スピードを持ってビジネスを行う外資系では、社内外でトラブルが発生する率が高く感じます。
一方、危機管理能力は非常に高く、その一員として社員には優れた問題解決能力が求められます。 - Leadership Skills – リーダーシップ・スキル
外資系企業ではリーダーシップは管理職者だけのスキルではありません。
複数の部署や役職を横断して仕事をするためには、ポジションパワー抜きのリーダーシップスキルが必要。
リーダーシップスキルはソフトスキルのベースの上で発揮されます
これらのソフトスキルが指定された職種に応募する場合は注意してください。
ソフトスキルは明確な尺度がないので、確実に過去の例を説明するように聞かれます。
“Can you explain me your leadership experience with own example?”
具体的な例と一緒に、あなたのリーダーシップ経験を説明してくれますか?
のように。事前に解答の準備を忘れずに!Good Luck!
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